ザックに差していたピッケルの代わりに,ノコギリを差して山に入る。
|
星空と吾妻山 |
①日時:2014.5.18(日)
②行先:吾妻山
③メンバー:Mk(単独)
④行動概況:
一人で山に入るより,気の合う仲間と一緒の方が楽しい。日曜日が休みの仕事なら,そういう山が増えていただろう。いつものように,日の落ちかけた道をゆっくりと上がっていく。重たいザックを担いで登山道を少しはずす。藪の中に入る時の寂しさが,社会と山との境界線だ。境界線を越えると身体性が順応していくような気がする。特に機能が鋭敏になるのは聴覚だ。風の鳴らす音か獣の鳴らす音か・・・獣ならばその大きさも想像がつくようになった。熊よけの鈴を外して耳を凝らす。規則正しい小鳥の声に,小さな歩幅の獣の音が混ざっている。「もう遅いからお母さんの所へお帰り」と声をかける。ウサギだろうか?遠ざかっていく足音が聞こえなくなった時,日が落ち夜がやってきた。ヘッドライトを照らして,枯れ枝を拾う。 一抱えほどの枯れ枝を,ひもでザックにくくり付ける。楽しみである「焚火」の為なら重さも苦にならない。
|
焚火は決められた場所でする |
幕営地に着き,ザックを下ろすと,枯れ木に火をつける。寝床の準備が出来たころ,焚火はちょうど良い高さになっていた。ヤニで黒くなったコッヘルに,水で割った安いバーボンをいれて沸かす。焚火の温もりで体がほぐれてくる。温まった独特の香りが,一人の寂しさを消してくれる。へべれけになる前に,それをコッヘルからポケットボトルに移し替えて大膳原まで歩いていく。大膳原は広いコルで,視界を遮るものは何もない。吾妻山の背後に月は隠れ,美しいシルエットを映しだしている。輝く星をつまみにグビッと一口やる。この安いバーボンは,温めたり炭酸で割ったりと雑に扱うほど美味くなる。 誰もいない真っ暗な草原にただ一人。満天の星空に溶け込んでいくようだ。
|
うっすら流れ星 |
大膳原の広い草の上に寝て,深い星空を眺めていると,一筋の流れ星が通りすぎた。ちょうどその頃,カメラの電池も酒もなくなった。焚火に戻り,次は日本酒を温める。修業時代に電気を止められ,フライパンの上で割り箸を焼いたことを思い出す。一人,回った酒でニタニタしながら昔の記憶と現実の世界がうつろうつろとして,朝までそのまま眠った。 気がつくと,御来光はとっくに終わり明るくなっていた。ザックに荷物をまとめ新緑の登山道を下り境界線を越えると,嫁と映画を見に行く約束を思い出した。焚火に燻されたこの香りを彼女は受け入れてくれるだろうか?叱られる前に清嵐荘の湯に浸かり現実社会へと家路についた。※焚火は大膳原ファイヤーサークルにて安全管理を徹底して行いました。所定の場所以外での焚火は禁止となっております。
木の燃える匂い,炎,なぜか心が落ち着く。好きだね。いい年をした親父が山に入り,少年に帰る瞬間だ。こんな気持ちずっと持ち続けたいね。私はそんな薄っぺらな感傷に浸りたく山に行くのかもしれない。女性もこんな気持ち,持ち合わせているんだろうか?
返信削除最高のキャンプですね。アウトドアカタログのようなすばらしい写真、楽しませていただきました。
返信削除