2014年3月11日火曜日

2014春 大休峠(完結編)

春の大山は,雪が締まり面白いルートがたくさんある。しかし,日本海に面する独立峰,大山の天候を味方にすることはとても難しい。天気図を眺めながら,自分にとって都合のよい解釈をしようとするが,山頂の荒れ狂う景色が容易に想像できる。行ける所まで行って6合目で引き返す屈辱的な山はもう飽きた。撤退なき,目標を貫徹する山行きにこだわり,寒波が来るほど面白くなるパラドクサルな大休峠へ若きエースMtと行ってきた。
林道を快調に行く

①日時:2014.3.10(月)
②行先:大休峠
③メンバー:Mt,Mk
④行動記録:
香取上部(7:10)→甲川分岐(08:20)→大谷クリア(09:20)→(10:00)大休峠避難小屋(11:00)→大谷クリア(11:50)→香取上部(13:00)
⑤行動概況:
朝4:00に自宅をでると,満天の星空があった。気温は高く,車のフロントガラスが凍結していない。今頃にしては不思議な現象にあまりいい気持ちはしない。7:00過ぎに歩き始めて,しばらくは北の方角に青空が見える。天気がいいと香取の林道から三鈷峰が見えるが,この日は鉛色の雲が分厚くそれを隠していた。新雪がふかふかして気持ちよく,二人で並んで歩いた。
この冬,大休峠に何度か挑んだが,全てがしょっぱい山行きになってしまった。今回は西高東低の厳しい条件の中で,何としても目標を貫徹させたい想いが強かった。
鴨鍋を来年もやりたい
大谷まで,明らかに認識できる谷が4本ある。私はそれらを香取から4の谷・・・1の谷と名付け目印にしている。4の谷から3の谷までは,斜面を緩やかな上り調子にルートをとり,3の谷を越えてから大谷の上部までは,ぐいぐい高度を稼ぐようにルートをとる。上手くいけば2の谷は楽に越すことができる。大谷を越えるのも,上部からの方が藪も少なく楽に通過できる。大谷を越える登りは,凍った斜面に新雪が覆いかぶさり,何度か滑りそうになった。その辺りから急激に気温が下がり,風が勢いをつけて襲ってきた。バラクラバをつける間もなく前髪が凍りつく。ルートを野田の方にとり,下がらないよう注意して,一歩一歩確実に進んでいく。このころになると,視界は15メートルくらいになり,目視だけでは進路が定まらなくなる。「天候の急変」「猛烈な吹雪」「遮られる視界」まさに,新田次郎の春山の世界に迷い込んだような気がした。撤退の判断材料はそろっているが,目視では確認できない大休峠避難小屋までのルートがイメージで明確に見えていた。GPSを使うのはカンニングのような気もしたが,イメージとGPSの回答が合致しており,吹雪に向かって進んでいく。最後の谷を巻き込むと,開けた雪原にでる。目を凝らすと雪に飲み込まれかけた大休峠避難小屋が見えた。復路の厳しい天候を考えると,到達した喜びや感動も抑え気味になってしまう。
心強いパートナーMtと
 黙々と小屋を掘り起こし,温かいものを口にして急ぐように小屋を出ると,すでに2人のトレースは無くなっていた。左手の指は痺れて感覚が無い。歩みを速めても,息は上がるが体温は上がらない。こんな時には,気持ちというか,精神というか,気迫に満ちた自信が必要だと思う。今までのしょっぱい経験が自信に変わっていくのを感じた。大谷を過ぎると風は止み,ガスも晴れていた。さっきまでの厳しい嵐は何だったのか・・・春の山に私の気迫はミスティ-フィカシオンされ,難なく下山することが出来た。下山しMtと一緒に代表Sの店に蕎麦をいただきに行った。ひと箸ごとに心も温まり,ようやく目標が貫徹できた喜びが湧いてきた。信頼できるパートナーMtと最高の大休峠を完結することが出来た満足感は格別だ。残された課題もたくさんあるが,しばらくは,この余韻に浸って満足したい。少なくとも来週の月曜日までは。

6 件のコメント:

  1. 貴方のブログはパラドクサル,ミスティフィカシオンなど難解というか,あまり使わない言葉が出てきて勉強になるね。
    文章から大休峠周辺の厳しい状況が体に伝わってきます。この感覚は行った者しか,経験した者しかわからんだろうな。
    やっとYCCにも冬の大休峠,主体的に計画し,自分の力で行こうとする人が出てきて嬉しいよ。
    撤退は屈辱的ではありません。自然に対して謙虚に,自然が少し優しさを見せてくれた時,こっそり通してもらいましょう。
    苦しさの中に楽しさを感じながら。

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    1. 今回の大休峠下山後,大山の遭難を聞きました。お亡くなりになった方の死を悼み,命についてもう一度深く考え,自然に対して謙虚な心をもって,山を深めていきたいと思います。月曜日に事件があった場合,捜索のお手伝いができるように,心と体を鍛えていきたいと思います。

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  2. お疲れ様でした。
    大山遭難は縦走路で起きたようですね。同日にYCCメンバーも4人大山に入っていたことを考えると、改めて油断してはいけないなと考えさせられました。

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    1. 次の月曜日にスキーツアーを考えています。奇跡的にお休みが一緒でしたら、スキーについてご教授下さい。

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  3. 月曜日はありがとうございました。
    当初の一の沢から、天候により大休峠に変更しましたが、遭難のこと聞いて、本当に正解だったと思いました。Mkが盛んに「西高東低、西高東低・・・・」とレクチャーしてくれたことに感謝します。
    また、大休峠までに比較的大きな谷が4つあることも教えてもらい、覚えておきます。3時間で大休峠に着いたことや若干の悪天候を経験できるなど、非常に充実した山行でした。
    それにしてもMkは早かった。ぜんぜん追いつくことができず、「さすが」でした。特に帰りの香取までの数百メートルを一人で歩いているとき「あー、そういえばこの場面は昨年の大晦日と同じだなぁ」とややネガティブな考えに陥りました。
    今季は3回大休峠に行きましたが、すべてMkと一緒であり、なんだか不思議な縁を感じる山行でした。
    これからもいろんなところに行きましょう!!

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  4. そういえば、Mtと行った大休峠は全て到達してますね。ナイスコンビだと私は思わせていただいています。横並びで歩くと、競争原理が働き早くなるようですね。ゆっくり歩く練習も必要かと思いました。次回はどこにいきましょう?楽しみです。

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