2016年7月27日水曜日

2016夏 北アルプス(奥黒部縦走)

会員Ysから山行記録が届きました。
太郎平小屋で生ビール
主題歌は「少年時代」(井上陽水)
♪夏が過ぎ風あざみ 誰のあこがれにさまよう…
1学期最後の授業でこの曲をかけている時,私の心は黒部の稜線に飛んでいた。今回またも独り。梅雨明けの週末さすがの黒部も人が多かろうと想像したけれど,見渡す限り誰もいない時が多かった。黙りこくって歩き続ける身体をこの歌がくり返し満たすのだった。
①日時:2016.7.22(金)~24(日)
②行先:薬師峠~北ノ俣岳~黒部五郎岳~三俣蓮華岳~祖父岳~雲ノ平
③メンバー:Ys(単独)
④行動記録:
【1日目】折立登山口(14:22)→太郎平小屋(18:22)→薬師峠キャンプ場(19:20)
【2日目】薬師峠(4:22)→(5:45)北ノ俣岳(6:15)→(9:30)黒部五郎岳(10:15)→(14:45)三俣山荘
黒部五郎岳への道
【3日目】三俣(3:10)→(4:50)岩苔乗越(5:20)→祖父岳(6:00)→(7:15)雲ノ平小屋(8:00)→(10:00)薬師沢小屋(10:30)→(12:30)太郎平小屋(13:00)→(13:20)薬師峠キャンプ場(14:30)→(18:00)折立登山口
⑤行動概況:
【1日目】9時間の車移動でそこそこ疲れた身体にテント泊装備が重い。汗びっしょりで太郎平小屋の戸を開けると同時に「生ビール下さい!」と叫んだが,ダルビッシュ(小屋主)は平然とスルー。「泊まるんですか?あテント。ではこれに記入して。他に歩いてる人いましたか?」「下から来たんです。だーれもいません。そこのスリッパ借りていいですか?」「これは小屋用です(拒否)」。やっと差し出されたジョッキを手に小屋前のテーブルへ,暮れなずむ山並みにひとり乾杯。…♪青空に残された私の心は夏模様…
黒部五郎岳にて
【2日目】夢見ていたこの日が来た。夜明け前の稜線を辿る至福…チングルマの穂が足元に揺れ,山々は目覚めようとしている。登山者は彼方に1人だけ。この広い世界をほとんど独り占めだ。
5月1日にホワイトアウトで撤退した北ノ俣岳に到着。地形から検証するに引き返したのはどう見ても頂上看板のすぐ脇ではないか。『見えなかったんだよぅ…』無念な経験なのに楽しさが胸を満たすのは何故だろう。さらに進み,昨年赤木沢から詰め上がったのはこのあたり,濡れた靴を地下足袋に履き替えぽくぽく歩いたっけ…。黒部五郎を登るにつれガスが勢いよく上がってきた。もうすぐそこが頂上だと確信した時,胸の中のピアノはいっそう高らかに響き渡ったのです…。
祖父岳への道
頂上からみはるかす薬師は大きく神々しく鷲羽・水晶・赤牛は「こっちへ来いよー」と呼んでいる…トマトや胡瓜,チーチクなど食べているうちガスに覆われてきた。岩ゴロの稜線ルートで足首を捻ってしまい減速。五郎小屋を過ぎ向うから来た単独者が「さっき三俣で熊に会った」と怯えて語る。『何だと!この痛む足ではダッシュで逃げられない』(走って逃げてはいけません)と私も青ざめた。熊鈴を忘れてきたので「山賊の唄」を口ずさみつつ前進。三俣山荘到着が15時前になり高天原まで行くのは断念した。鬼窪さん(「山賊鬼サとけものたち」参照)がおられたこの小屋に泊まってみるのも楽しからずや。
祖父岳から雲ノ平,右奥に薬師岳
【3日目】翌未明。断念した筈なのに2時過ぎに目覚めストレッチを始めた。高天原へ行くかどうかは岩苔乗越で決めれば良いじゃないか。熊が怖いがヘッドランプ点けてスタート。けれど水の流れる小道を真っ暗な谷間へ降りるのは歩き難く気が滅入る。「丑三つ時にいい歳したご婦人がたった1人で何してんだ?」と思わないでもない。熊よけに「お邪魔しまーす!」など喚きながら進む。ホイッスルがあるのを思い出しピーピー吹きながら黒部川の源流を詰めるにつれ夜明けが近づいてきた。
岩苔乗越に着くときガサッと物音。分岐なので登山者かも?やや控えめの音でピピピとやりつつ上がると赤い上着の青年が現れた。「お早うございます。三俣で熊が出たのでびびって歩いてるのです」「僕は熊じゃありませんよ」と微笑む。とても色が黒いので本当は熊かもしれない。青年が去ったあとお茶を沸かし小屋弁当を食べながら考えた。諦めきれないけれど高天原へ行けば有峰林道の閉鎖時刻を過ぎるだろうし,明日は雨だ。ここは軟弱に雲ノ平経由決定(軟弱とはいえざっと見積もってあと10時間は歩く)。
太郎平小屋ラーメン
祖父岳山頂でもまだ6時。目の前の雲ノ平と四方の山々を朝の最初の光が刻々と鮮やかに輝かせてゆく。やたらあるケルンの1つに私のために1個、友のために1個積んでいると,向こうから高校生達が隊列を組んで登ってきた。初々しく逞しい少年達と導く先生の凛々しさがこの時間この場所を一層爽やかにする。(後で調べると関東地区代表高だった)
乾いた木道は滑る事なくハッカ油効果で虫にも刺されず快適に薬師沢に到着,冷たい水を補給して暑さに喘ぎつつ最後の登り。今日こそは念願の太郎小屋ラーメンを食べるのだ。

5 件のコメント:

  1. 太郎平小屋の生ビールに始まり,太郎平小屋のラーメンで終了する。Ysらしい山行だ。
    北アのダルビッシュ相変わらず良いキャラクター出してるね。
    折立から太郎平小屋まで4時間か,3時間で歩ければ,北アルプス駆け巡ることができる。今は昔。

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  2. 「Ysらしい」って何ですか自分では分かりませんけど。
    折立から2時間で上がってたT、休憩はしなかったのですか?今回5個のトマトやトンカツの半分をここで食べました。全部ドライでは長丁場がもたない気がする一方重たい、悩むところです。

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  3. 昔の話をするようになったらもう終わりかな。もう数年は今まで通りとはいわなくても,ゆっくりなら歩けると思ってたけど,そうもいかなくなった。体力の切れ目が縁の切れ目か。
    2011冬からスタートしたHP,ブログ,そろそろ閉鎖なり,リニューアルを考えるのもよいだろう,このブログそれなりの使命ははたした。
    とりあえず2016秋までは面倒をみます。それまでにメンバー決めて方向性を示して下さい。無いも出で来なければ閉鎖します。

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  4. 私だったら高天原に泊まり翌日は大東新道から黒部川に入り,薬師沢をイワナと戯れながら薬師峠に上がるね。そんな話もしてあげたのに。そうしたくなかったか?できなかったのか?
    山には登山力が必要だ。

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  5. 高天原の予定でしたが夕食時間過ぎての到着(前回と同じ)になりそうで失礼だったし、三日目の夕刻以降は雨予報だったので大東新道は通れない(前回と同じ)ので諦めました。雨で増水した黒部川に単独で入る「登山力」は私にはありません。
    薬師沢を一緒に釣り上がりましょうとTをお誘いしたのに、そうしたくなかったのかできなかったのか。

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