いくら歩いても風景が変わらない。誰のトレースもなく,動物たちの鳴き声すらしない。黙々と歩きだすごとに,荒くなる呼気と鼓動。見渡す限りの続く白い静寂の中に,温かいぬくもりを持つ生き物が,自分の他に存在しないことを意識した時,人は何を想い,何を感じるのであろうか。そんな冒険的な経験が出来るのが冬の大休峠だと思う。Tより野田ヶ山のピークを経由するルートの提案があり,地図を広げイメージを膨らませた。「
よし,行ける!」と確信し,勢いよく出発したのだが・・・
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ブナの木ではなくミズナラでした。 |
①日時:2014.1.13(月)
②行先:野田ヶ山経由大休峠
③メンバー:Mk(単独)
④行動記録:
香取上部(7:50)~甲川分岐(10:10)~大谷(12:20)~大谷源頭部(13:50)~大谷(14:20)~甲川分岐(15:30)~香取上部(16:20)
⑤行動概況 :
Webで登山計画書を提出し,代表SとT,そして地元の先輩Aに,シリアルナンバーと17:00までに下山する旨を伝える。
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ロマンティックに感じる林道を行く |
香取を出てしばらくすると,スノーシューのトレースが,うっすらと現れる。おそらく,この連休中についたものともと思われるが,ほとんど消えている。スキーを履いているにもかかわらず,新雪は膝近くまで沈む。降り続ける1月の雪が,ハードな試練を,私に与えようとしている気がした。甲川分岐にたどり着いた時,まさか2時間以上もかかっているとは思いもしなかった。
前回12月に来た時には1時間10分,倍以上もかかっている。自分の中では,かなり急いで歩いているつもりだった。この調子だと「野田ヶ山は無理かもしれない」と頭をよぎった。それでも,なんとか大谷まで,速度を上げていく。汗で,ジャケットも,パンツもびっしょりにしながら,香取を出発すること4時間半,大谷に到着する。
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どこかわかりにくいが大谷源頭部 |
あと,1時間30分で,野田ヶ山だけは行きたいと思い,大谷の沢を,野田ヶ山に向かって上がる。沢の中は,余計に積雪が深いため,左の斜面を少し上がったところを,トラバースしながら進んでいく。野田ヶ山のピークは,急な斜面の上に見ることができる。いつもなら何ともない高さだが,この日はとてつもなく高いピークに見えた。大谷から歩き続けること1時間半,ようやく,なだらかになった大谷源頭部に到着した。一泊分の装備も持っているし,体力も気力も,十分残ってはいたが,17:00までに下山する旨を伝えていたため,時間切れの下山を決断した。スキーからシールをはがし,いつものようにカフェオレを飲んでいたら,指先がジンジンしてきた。ザックのストラップ,カメラのストラップ,オーバーグローブでさえも,カチコチに凍っている。おそらく大量にかいた汗が凍り始めたのだろう。この状態のまま,山中で一泊ビバークでもしようものなら,さぞ,涼しい夜を過ごすことになっていたと考えると,あの決断は正しかった。と,自分を慰める。帰りは,水分不足で太ももが何度も攣りながら,へぼな滑りで,3時間かけて香取に到着した。野田ヶ山,大休峠に行くことができなかったが,充実したハードな山行であり,悔しいので,撤退の文字は入れなかった。今シーズン,このルートは様々なアイデアで必ず達成させようと思う。
雪の大休峠,一人でも行くという会員出てきて嬉しいよ。
返信削除大休峠まで行けなかったのは,いろいろな意味で準備不足だね。
通いに通った大休峠,いろんなバリエーションで行きましょう。だけど,貴方と行くときは撤退と言う文字はないよ。
そう言うからには私も精進,節制しないといけないね。
御指摘の通り、いろんな意味で準備不足でした。次回は、出発時間を6時に設定し、背中にスノーシューを担いで、上がろうと思います。山スキー、もう、傷だらけになりました。
返信削除(もう一言)
返信削除・私の山スキーの方がもっとボロボロでおまけにオーバーズボンはエッジでズタズタです。大丈夫,スノーシュー必要なし,山スキーに慣れましょう。
・いくら雪が多く埋まるとはいえ,山スキーで香取から大谷まで4時間半,少し時間かかりすぎだね。
・野田ヶ山稜線をリコメンドしたのは,大休峠までのスキー滑降が楽しめるからです。
・最短で大休峠に行きたいならば,前回のコースでしょう。
・次回のコース,行きは最短コース,帰りは草谷コース,どうかね。
・大谷(誰がつけたが知らないが,昔はそんな呼び名はなかった)源頭部から野田ヶ山は急登なのでトラバース気味に稜線に出たほうがいい。
・写真はブナではなくミズナラだね。
了解です!今シーズンは、徹底的に山スキーを体得しようと思います。次回のコース、草谷了解いたしました!よろしくお願い致します。
返信削除地元の先輩Aです、皆様明けましておめでとうございます。
返信削除MKくんの頑張ってる姿が思い浮かぶような山行レポートでした。彼らしいレポに笑みを浮かべながら読んでおりました。山スキーも魅力満点で羨ましく思いました。teraさんの山知識を感じさせられるコメントの数々、毎回文章の中から切り取って記憶に留めようと思っております。